2019
01.28
広がり空間 

日本の住いの伝統は流れる空気

家づくり・建築のこと, 開発者田中さんのブログ

  シリーズ「住まいの肝 流れる空気」 no.4 

日本の住いの伝統は流れる空気 

 日本の昔の建物、伝統的建造物の寿命はとても長いとの印象を多くの方が持たれているのではないだろうか。事実、現在の新しい建物とは比べ物にならない位、長生きである。 

 どうして、なぜ昔の建物は長生きなのだろうか。 

 いくつかの理由が考えられる。一つは木造住宅で、構造がしっかりとしていた。それは厳選された質の高い骨太の無垢の木が使われ、木組みという長い時間をかけて完成されてきた大工の技で組み立てられていた。 

 また、床や天井なども厚い無垢の板であったし、壁も自然の土や漆喰などを塗った真壁や厚い無垢の板で構成されていた。屋根も茅葺や瓦とやはり本物の自然の材料でつくられていた。建具も無垢の木や紙・自然の糊であった。 

 間取りも引き戸で仕切られたプランで、住む人の人数の変化など時間の変化に自在に対応できるものであった。 

 こうした複合的な要素で昔の建物の寿命は長かったのだが、これらの要素がその力を発揮し健康で長生きであったのは、「流れる空気にふれている」という支えがあったからである。 

 どんなに上質な木を使おうとも、もしそれらの木に「流れる空気」が触れていなかったら、こうまで長生きできなかっただろう。 

 まったく風のないよどんだ空間に置かれていれば、無垢の木といえども長生きはできない。よどんだ無風の空間は湿気もこもり腐朽菌なども繁殖しやすい、無垢の木はいい餌食であろう。「流れる空気にふれさせろ」これは無垢の木に天寿を全うさせるための伝統的な知恵であった。そういう眼で改めて昔の建物を眺めるなり、思い起こして欲しい。見事に流れる空気に触れていることが分かると思う。 

 土台や柱そして梁などの構造材は、外からも建物内空間からも見えていた。それは外の流れる空気にも、建物内を流れる空気にも常にふれていたという事だ。 

 壁も昔の真壁構造で両面が露出し、やはり常時流れる空気にふれている。

床面や天井面も裏表両面がさらされ流れる空気にふれている。

基礎は現在と違って布基礎のコンクリートで囲まれてはいない石場建てという構造であったので、床下空間には外気が自在に流れていた。

天井裏空間も現在の建物とは異なり気密性は高くなかったので、外気が十分に流れ、屋根や天井の裏側に流れる空気がふれていた。

建具も隙間が多く、間取りは個室ではなく広がっていたので風通しは極めて良かった。 

 それらの構造が建物を湿気から守り、建物の寿命を長らえる結果となったが、温熱環境的には中途半端な事になってしまった。夏は風通しが良く自然の涼しさを満喫できたが、冬は耐えがたいほど寒かった。この事が、現在の高気密高断熱住宅につながってきている。

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