2022
12.18

対談レポート「フェアトレードと顔の見える家づくり@木更津金田」後半

家づくり・建築のこと

2022年12月4日に開催されたトークイベント「フェアトレードと顔の見える家づくり」後半です。

 

 

金融とフェアトレード

市川

金融機関の選び方にも、フェアトレードの考え方があると聞いたのですが

 

胤森

フェアトレード自体は金融と直接関係あるわけじゃないんですけれども、フェアトレードというのは、お金の流れをちゃんとフェアにしようということなんですよね。
ちゃんと仕事をしてる人達に適正な賃金が払われないような、買いたたきのようなことを正していこうというのがフェアトレード。いわばお金の流れな訳ですよ。

例えば大きなブランドで高い物を売っているけれども、実際につくっている人がいる現場には全然お金が入っていない…というようなことはいくらでもありますよね。

宣伝費にお金をかけて、本社は潤っているけど、末端の人たちにはお金がいっていない…という流れを是正して、末端の人たちがちゃんとお金を得られるようにお金の流れを変えると言う仕組みだと思うのです。

その考え方からいうと、銀行にお金を預けるというのも、預けたお金はどこに行ってるんだろうと考えることが、すごく大事と思っています。

銀行にお金を預けるということは、そのお金がその銀行の金庫に眠っている訳じゃなくて、銀行はそれをどこかに投資して利息を得て銀行が成り立っている訳ですから、必ず私が預けた1万円は誰かのどこかに投資されている訳です。

じゃあ、その投資先はどこ?って考える。たとえば武器をつくっている会社に投資とか、石炭産業に投資しているかもしれません。
お金を預けてる一人一人が、この銀行に預けたらこんなことに使われちゃうからこっちの銀行にしようっていうような意志を持って金融機関を選ぶと、それだけでも世の中が変わっていくんじゃないかしら。

わたしはフェアトレードの考え方でいろんなことを勉強するにしたがって、大手銀行などよりも、たとえば地元の信用金庫などに預けたいなと思う様になりました。地元の中小企業さんに融資をしていたりするので、自分が住んでる地域にちゃんとお金が循環しますから。

お金の流れを変えるということも一消費者として実は結構な力を持っていると思います。
一般的な社会人が生涯使えるお金は平均1億円と言われていますが、ひとりひとりが意思を持ってその1億円を使ったら、社会が大きく変わる思います。

フェアトレードの話をすると、問題が大きくてグローバルすぎて、「わたしはピープルツリーのチョコレートが好きだから買うけど、わたし一人が買ったところで児童労働の問題が解決するとは思えない」と思いがちですけど、でもやっぱり最初は小さな力でも集まれば大きくなるもので、消費者の力は無力ではない。

企業に対して物が言えるのは、やっぱり消費者なんですよね。
例えばバングラデシュの事故につながったブランドがあったとして、そのブランドが、あういうところに発注するのはまずいな、生産工場の状況を責任もって確認するようにしよう、と思わせる力は、消費者にあるんです。

「あなたの商品があんな状況で作られているならもう買いたくありません。変えてください。」という様な声が、1人の声では難しいかもしれないけれど、もしも5人から届いたら、メーカーも「お客様の意識が変わってきてるようだ」と動き出すきっかけにはなると思うんです。

 

 

子ども達の世代に・・・

市川
最近は、小学生、中学生といった若い世代が授業でSDGsの勉強をしていて、フェアトレードに関心を持って活動している多くの20代がいます。
10年後、20年後の社会がとても楽しみだな…と思うのですが、いかがですか?

 

胤森
それは、わたしも感じます。

わたしは今もフェアトレードの広報とか啓発にかかわっている立場で、講演のご依頼をいただくことがあります。昔は大学の授業でゲスト講師に呼ばれることが多かったのですけど、最近は小学校でSDGsを教えてるんですよ。

小学校の先生方が、SDGsの17のゴールを達成するために何をすればいいのかを子ども達に教えたいと思ったときに、フェアトレードというのが有力なアクションのひとつだということに皆さんが気がついて、「フェアトレードの話を総合学習の時間にしてください」という依頼が最近増えています。
特に、中学、高校が多いですね。

高校生は学園祭で自分たちでフェアトレードのチョコレートを販売して、児童労働のことを説明したり、フェアトレードの原料を使ってスイーツをつくったり。ホントに10年後がすごく楽しみです。

 

 

家づくりを検討されている方へ

市川
そろそろお時間なので最後の質問を。
これから家づくりをしよう、リフォームをしようという方に、ひとつアドバイスをいただけますか?

 

胤森

お金の流れのところでもお話したんですけど、やっぱり家って高いです。エアサイクルハウジングさんの見積もりと他社の見積もりを比べたら、その差にう~んと悩まれると思うし。

特に夫婦の間で価値観の違いがあってまとまらない…みたいなお話をよく伺うんですけど、お金の使い方って、自分の価値観の表現だと思うんですよ。
だから、もしご夫婦の間で意見が違うようだったら、自分達が何を一番大事にしたいのかということを、とことん話し合って。

このお金を使うことによって、何が実現するのか。

自分たちの家というのが、最大のアウトプットではありながら、それ以外にも、腕のいい大工さんとか、山を手入れしてくれている人たちとか、そういうところにお金がいくんだということをイメージして、そして、このお金を払うことの意味というのを感じられる大きなお買い物だと思うので、それを納得いくまで、ご検討されるといいかなと思います。

市川
ありがとうございます。
今日は興味深いお話をたくさん聞かせていただきました。
最後になりますが、わたしの最も大切な家づくりの理念があります。「作り手も、住む人も、50年後の子ども達もハッピーに」わたしの家づくりの原点です。
作り手も住まい手もハッピーにというのは、今日のお話の中でも理解していただけたと思うのですが、「50年後の子ども達」のことだけちょっと説明させてください。わたしは自分が50歳を過ぎた頃、その時はエアサイクルハウジングの代表をやっていたんですけれども、この会社の将来のことを考えたんです。どこに向かっていきたいのか?と。
経営者というのは100年後の会社のことを考えることが大切とよく言われるんでね。
ですが、その時自分は、100年後をイメージするというのがどうしてもできなくて。でも、50年後だったらイメージができたんです。
今2歳の孫が52歳になる50年後、もう自分はいないけど、52歳の孫が元気でいてくれたらいいな…そんな社会であってほしいと、すごく強くイメージできたんです。だから100年後じゃなくて私は50年後をイメージしてみました。50年後、この子達が元気でいられるような、笑顔で毎日の生活ができて、美味しいものが食べられて。そういう何気ない幸せな日々がこの子達に訪れてくれたらいいなって思うと、家づくりを通して自分ができること、会社が目指すものが見えてきた。
そこ(50年後の子ども達の幸せ)を見据えてひとつひとつは地道なんですがこれからも家づくりに関われたらいいなと思ったんです。家づくりだけでなくリフォームも同じ。お化粧直しというリフォームはしたくなくて。
「この家を何年持たせたいのか?」この質問からスタートします。10年という方と、30年住みたいという方ではリフォームでやる事が変わるんです 。
30年住みたいならこういう工事をしないと中途半端になりますよ 。10年だったらこの工事でいいですよ。そういったやり方をお客様と相談しながら、やっています 。自分のできる家づくりをこれからも続けていきたいと思います。今日はありがとうございました。

 

 


2022年12月4日開催 トークイベント「フェアトレードと顔の見える家づくり」より

【スピーカープロフィール】
胤森なお子さん
NGOグローバル・ヴィレッジ 代表
一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム(FTFJ) 理事
1999年ピープルツリー(フェアトレードカンパニー株式会社)に入社。編集や広報を担当しフェアトレードのスポークス・パーソンとしてセミナー講師などを務める。2006年~2016年同社常務取締役。2016年より、同社の母体NGOグローバル・ヴィレッジでフェアトレードの啓発・推進活動を担う。
2011年、フェアトレードを推進する全国の有志で「フェアトレードタウン」等の認定を行うFTFJを設立、2014年~2020年7月まで代表理事を務め、現在は認定事務担当理事。
【ファシリテータープロフィール】
市川小奈枝

エアサイクルハウジング・株式会社ひらい東京

「住む人もつくる人も、50年後の子供たちもハッピーに」をモットーに注文住宅の営業として30年。素材もつくり手の顔の見える家づくりを推進。
それは、住む人が快適で、環境問題の解決の一助にもなることを伝えている。