2019
02.09

住いと家族の心の健康との関り

PAC工法開発者のブログ

シリーズ「健康住宅の基本」全13話

第2話 住いと家族の心の健康との関り

家族が共に住まう場所。それが住宅の基本的な役割であろう。当然ながら家族は最も身近な存在である、それだけに逆説的ではあるが難しい人間関係だとも言える。親子、姉妹、兄弟、配偶者など関係が濃くなるほど難しくなるのではないだろうか。

その理由は様々あるだろうが、ここではその原因追求といったテーマは追わない。少なくとも同じ家に住まう家族である、近いがゆえに難しさも伴うという位にしておこう。

家の間取りは、こうした家族の人間関係を主なるテーマとして考えていくべき事柄のはずだ。

そして、人間関係全般に言えることだろうが、距離感がとても重要な要素だ。離れすぎても近すぎてもいろいろと問題が起こりがちになる。よく言われることだが、「つかず離れず」の絶妙な感覚がやはり大切なことになると思う。

この「つかず離れず」を間取りの基本として取り入れられれば素晴らしい。「つかず離れず」の空間感覚を、言葉を変えていえば「見える、聞こえる、感じる」空間と表現できるだろう。

「家族の姿が見える、声が聞こえる、様子が感じられる」空間といった意味合いだ。

現代の間取りに代表される「何LDK」の間取りのように過度にプライバシー重視の個室プランにならず、さりとて昔の田の字間取りのようにオープンになりすぎない、そんな空間づくりが、現在求められる間取りであろう。

家族が帰って来た時、個室に入る前に姿が見える。ただいまの声がちゃんと聞こえる。姿が見えなくても雰囲気が感じられる。それでいてプライバシーの確保もできる。

そんな間取りが、家族が生活を共にするにはふさわしいのではないだろうか。

家族という人間関係がうまくいっていれば、決して楽とはいえない家の外の人間関係をそれなりに上手にやっていくことにつながるであろう。

どんなに親しくてもベタベタしすぎては、やがて嫌になる。逆にちょっとしたいさかいででも仲直りのきっかけがつかめない程、距離があるような空間では、不快な気持ちが長引いてしまうかもしれない。

心の距離感と身体の距離感は、案外と近いものがある。人間関係がうまくいくためには、どちらも「つかず離れず」、この要素はとても大切なことだと思う。

PAC住宅は、この空間感覚を「広がり空間」と表現して提案してきた。これは1982年に「健康住宅宣言」として発表した内容の間取りである。

もちろん間取りは住まう家族の実態に応じて一つひとつつくっていくものであるが、共に暮らす家族が、バラバラでありたいと願う家族に出会ったことはない。同じ屋根の下に暮らす前提は、やはり仲良くありたいとの思いが当たり前の前提であろう。

 

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