02.28
現代の家は流れる空気を止めた
シリーズ「住まいの肝 流れる空気」 no.5
現代の家は流れる空気を止めた
前回お話ししたように、昔の日本の建物は十分に流れる空気にふれていたので、天寿を全うでき夏も自然の涼しさを得られていた。
しかし、その風通しの良さは冬場に寒さをもたらす結果となっていた。その寒さ対策と省エネルギーという時代の流れもあって住宅の断熱化は進み、現在の高気密高断熱住宅に至っている。
そこに至る道のりは、日本の建物から流れる空気を奪う過程でもあった。少し詳しくその過程を振り返ってみよう。
住宅の基礎はコンクリートの布基礎となり床下空間の風通しは極めて悪くなった。
そして住宅の断熱化。グラスウールが壁の中に入れられ、その厚みは時代と共に増え、その結果、壁の中の風通しは失われた。グラスウール等の断熱材は天井の上と床面の下にも入れられたので、それらの面が空気の流れからは遮断された。
木製建具はアルミサッシに変わり、隙間風は大幅に少なくなった。室内の気密性が高まったという事だ。
そして間取りは個室化が進み、引き戸はドアに取って代わられた。中廊下を軸とした何LDKプランが主流となっていた。当然、建物内空間全体の風通しは悪くなった。
さらには建築材料の工業化が進み、集成材や合板、プラスチック・アルミ材料そしてビニールクロスなどになっていった。この材料の変化は、無垢の木や土・漆喰など自然の材料が持っていた、呼吸作用すなわち調湿作用を捨てることとなった。
木造住宅の建て方も変化し、在来軸組工法でも根太レス工法や合板の多用などで本来確保されていた壁の中の空気の流れは遮断された。
大義名分は、構造的には省エネルギー・耐震性能の向上、生活的にはプライバシーの確保という事なのだろうが、これらすべての流れ・変化は湿気という観点からは、大きなマイナス作用なってしまった。
自然に流れる空気が、壁の中など構造内部では失われ、建物内部でも少なくなった。さらには湿気を吸ったり吐いたりする呼吸作用が、建物を構成するほとんどの材料から失われてしまった。
極端な表現をすれば、死んだ材料で死んだ空間をつくる、そんな家づくりになってしまった。
死んだ空間を蘇生させるのは機械と言わんばかりに、室内換気も温度調整も湿気調整もエアコンや24時間機械換気などに頼るようになった。
少し表現がきつくなったが、本質はついていると思う。人間も動物の仲間、本来自然と共にある。自然を上手に生かす材料・空間に住んでこそ生き生きとするのではないか。
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