12.03
流れる空気は呼吸
住まいの肝 流れる空気 シリーズ その2
流れる空気は呼吸
住宅における流れる空気は、人間においては呼吸に匹敵するだろう。呼吸が止まれば人間はすぐに死んでしまう、住宅もじわじわと死に追い込まれる。ただ住宅の場合は時間が結構かかりはするが。
呼吸を人間は意識することなく日常は行っているが、意外と呼吸は奥の深いテーマのようだ。瞑想、ヨガ、スポーツ、健康法などあらゆるジャンルで呼吸法の重要さは取り上げられている。
私もAヨガという日本人が開発したヨガをかじっているが、その基本は呼吸にある。呼吸は意識するとなかなか難しいものだ、そんなことを面白く感じながらやっているが、最近は無意識でしている呼吸もそれなりに良くなっているような気がしている。
話を住宅に戻すと、呼吸はより困難になっているのが最近の現象であろう。呼吸は生きているからこそ必要なものだから、住宅のように生きてはいない物質には必要ないとの観点でつくられているから、当然そうなるのだろう。
住宅は生きてはいない、そうした感覚は最近の住宅を構成する材料が自然から遠くなってきたからだろうと推測している。
木造住宅とうたいながら、ほとんどは無垢の木からは遠ざかっている。接着剤で固められた集成材で土台や柱、梁などの構造材はつくられているし、天井や壁そして床などに使われる板も接着剤で固めた合板をベースにつくられたものだ。
それらの見かけは木材のように見えもするが、その性能、人に与える感じ方や影響は全く異なるものだ。
無垢の木や本物の漆喰など自然の材料が生きている材料といわれるのは、空気中の湿気を吸ったり吐いたりする、有害な物質を吸着したりするなどの機能があるからなのだろう。
そして、合板のフローリングなどと違って、肌触りがとてもいいことにもあるだろう。
さらには目にも優しい。そこにいるだけで気持ちいい感覚が味わえるなど、住む人にとって、穏やかで柔らかい感覚を与えてくれる、そんな良さがある。
こうした無垢の木などの性能を発揮させるために、呼吸を止めてはいけないと表現している。それは具体的には単純なことだ。自然の材料は空気のよどんだ所には弱いのだ。湿気を呼びやすくなり、カビの繁殖も活発になり、腐朽菌による腐りも招く。
建物の木材を守る原則は、昔から「流れる空気にふれさせろ」と言われてきた。流れる空気は木材などの自然の材料の呼吸を促進する。要するに長生きさせるのだ。
この単純な大原則が、現代の建物には失われてきた。使われる材料が死んでいるのだから、呼吸はいらないという発想なのだろう。
仮に材料が死んでいるとしても、建物そのものに呼吸を取り戻すことは可能なのだが。
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